人の感情に関わる仕事をしているので、日常で体験するコミュニケーションや会話のやりとりに敏感になることがある。
小さな反応や表情、『あれ、これ言ってまずかったかな』と焦ること含め、自分の感情も含め、結構敏感に反応する。
きっかけは、小さい頃にいろんな大人のドラマや映画を見ていたからだと思う。
私が『大人って辛い』『お金がないって辛い』と知ったのは、
50年前のイタリア映画『ひまわり』
10歳にもなっていなかったけど、愛し合っていても一緒になれないことがあることをこの映画で教えてもらった。
元妻に会いに行くのに土産を買おうとするとき、一番気にいったものは高くて他のものに変えた主人公を見て、お金がないと欲しいものが買えないのだと教えてもらった。
大人になって最後のシーンの舞台になるミラノ中央駅に立った時、新婚旅行なのに悲しくて涙がボロボロでた。
そんなくらい私には感情に響く映画。
日本の作品でいうと、倉本聰さんのドラマもいろんな感情を教えてもらった。
あまり知られていないドラマだけど、高校生の私が夢中になったのは『昨日、悲別で』
昭和感満載のドラマで、北海道の炭鉱町からダンサーになる夢を抱いて東京に出てくる20歳くらいの男性の話。
あのドラマには、人間の弱さや小ささ、頭では割り切れない感情や関係があることを教えてもらった。
脚本が倉本聰さんなのでドラマの中の会話がすごくいい。
主人公だけど顔がカッコいいわけでもスタイルがいいわけでもない、普通にそこらへんにいてそうな天宮良さんが語るナレーションも心に響く。
オーディションを彼女と受けて、彼女だけが合格し落ち込む気持ち。
おめでとうと言いながら、全然喜べていない気持ち。
彼女が大きな役を取った日、小さな店の小さな役を逃して彼女の喜び報告電話をガチャンと切ってしまう気持ち。
自分の親友がケガをして自分に役がまわってきたことを喜んでしまう気持ち。
その気持ちを持つ自分を責める気持ち。
どれもが高校生の私には新鮮かつ、人間ってこんなものなんだと安心させてくれた。
またエンディングの曲も良かった。
22歳の別れ
当時は、22歳が結婚適齢期で、これを過ぎることは結構なお悩みという人も多く、22歳で別れたら後はないなどと思う時代だった。
私も22歳までには結婚したかったし、25を過ぎて結婚のめどがないことにストレスを感じていた変な時代だった。
だから22歳の別れはすごくいい歌に聞こえた。
今聞くと全然意味わからないっという感じだろうけど、当時の背景にはあっていた。
私はこのドラマが好きすぎて、シナリオ本まで買い、それを読んではドラマを思い出し懐かしんでいた。こんなにいろいろ処分をしてきたけど、今でもこの本は持っている。
急にこんなことを書きだしたのは、つい先日映画『ひまわり』がテレビで放送されているのを知ったから。
そして、同じ日、どなたかがYouTubeに昨日悲し別でを1話から最後までアップされているのを見つけたから。
映像の荒さは気になるものの、音声には関わりなく、30年以上ぶりにあの語りが聞けて嬉しく、一気に4話まで見てしまった。
出演者の中にはもうなくなっている人も多く、主人公のちょっと問題児の母親役を43歳という設定で五月みどりさんが演じていて、
『おふくろ一人でおいていけない』と言われていることには驚いた。
当時は、43歳だと今の70歳過ぎが言われるような扱いを受けていたことに。
時代って、すごいなと思ってしまう。
私は今は夢を叶えましょうなど言っているが、そんなことを言う根本にあるのは、自分の小ささや弱さに悩み、劣等感を持つ人に楽しく生きて欲しいから。
この仕事を始めた頃はそこを全面に出していたんだけど、
そうすると、ネガティブな部分にフォーカスがいき、時間がかかるし、しんどい思いもするので、
夢や理想を持ってもらうことで自分が抱えるマイナスも自動的に解消してもらう方が良いと思って切り換えた。
たまに、夢なんてなくていいと言われると、
夢なんてなくていいから、もっと毎日を楽しく過ごしたらと思う。
そして、夢なんてなくてもなりたい自分を決めることで今が楽しくなりますよと言いたい。
が、そんな人は仕事の依頼で会うわけじゃなく、プライベート出会うので私はおとなしく聞いている。
とにかく、人間はいろんな感情があって面白い。
悲しくって、切ないこともあるけど、それこみで人間っていいなっと思う。
昨日、悲別で。
ひまわり。
もし見た人がいたら感想教えてくださいね。